CBDを理解しよう

はじめに

CBD(cannabidiol)カンナビジオールとは、大麻草のことです。大麻というと一般の方は麻薬と勘違いして「怪しい」とか、「怖い」とかを感じてしまうことが多いようです。しかし、日本には麻の文化があるといってもいいくらいに、麻とは深いつながりがあります。

たとえば、神社のしめ縄は麻でできていますね。日本で最古の麻の使用例は、縄文時代早期(1万2000年前)の鳥浜貝塚遺跡(福井県三方町)で出土した大麻製の縄といわれています。「縄文」という言葉は「縄の模様」を意味しており、その縄こそ麻から作られていたのです。千葉県の沖ノ島遺跡では約1万年前の地層から、麻の実が出土しているようです。おそらく当時は実を絞った油を接着剤や食用にしていたのではないかと思われ、他にも、繊維や魚を取る網や釣り糸などに加工されていたのではないかと考えられています。

また、日本の伝統的な和紙は大麻から作られており、伝統的なランプや料理油も大麻の種から作られています。そして、昔の多くの服も大麻から作られ、花や葉、種⼦、根を薬⽤として利⽤してきました。

麻は中国から伝わったという説が有力のようです。世界的にみても1万年以上前から⼈類は大麻草を多くの⽬的で利⽤していました。

医療としてのCBD

薬効の中⼼となるカンナビノイドの働きは、ヒトにおける最⼤の恒常性維持機能である「エンドカンナビノイド・システム」(ECS)というものがあることが、研究から判明しています。ECSとは、人間は体に不調が起きると人体に備わっているホメオスタシス(恒常性)によりバランスを整えようとしますが、この時に体内の不調を伝達して整えるように働きかけるのがカンナビノイドやカンナビノイド受容体たちで、これら一連の働き(恒常性~カンナビノイド受容体)を総称してECSと呼んでいます。そして、加齢・ストレス・体外環境の影響で体内の内因性カンナビノイドが不足しているとECSが上手く機能しなくなるので、CBDを摂取して体内を整えようということです。これは全身でみることができます(図1)。

欧州における医療用大麻

1839年にアイルランドの医師(W.B.OʼShaughnessy)が、インド医学で使⽤される大麻に着⽬されて、その医学的な知⾒を欧⽶に紹介しました。破傷⾵や狂⽝病による筋⾁の硬直、コレラ患者の下痢と嘔吐などが大麻チンキにより軽減することなどでした。

イギリスでは⼥王の⽣理痛の治療に主治医が大麻を⽤いた記録があるようです。その後、ヨーロッパだけでなくアメリカにも使⽤が広まりました。⽇本でも印度大麻草、印度大麻エキス、印度大麻チンキなどが、敗戦後に禁⽌されるまで⽇本薬局⽅に医薬品として収載されていたようです。

がんにおけるエンドカンナビノイド系

カンナビノイド受容体は、正常細胞だけでなくがん細胞にも広く発現しています。種々の研究から、ECSの機能不全は、がんを含む多くの疾患の病態メカニズムの一部と考えられます。

カンナビノイド受容体は、さまざまな腫瘍において過剰発現、または過小発現していることが判明しています。CNR1(CB1受容体をコードする遺伝子)は、肺腺がん、甲状腺がん、乳房浸潤がん、子宮体部内膜がんで発現低下しており、胆管がんで過剰発現してといわれています。

CB2受容体はHR+乳がんおよび神経膠腫で過剰発現していると報告されています。CB1およびCB2受容体の過剰発現は、ステージ4の大腸がんにおける予後不良と相関しているとも報告されています。

CBDの抗がん作用メカニズム

動物実験モデルにおいて、また多くの臨床研究によって、CBDが抗がん作用を有することが明らかにされています。

CBDのアポトーシス(細胞死)促進作用や抗増殖作用は、多くの種類のがんで実証されています。細胞周期の停止、アポトーシスの誘導、がん細胞の遊走、接着、血管新生、浸潤、転移の抑制効果などがあるとされています。

多くの動物がんモデルにおいて、膠芽腫(脳腫瘍)、乳がん、肺がん、前立腺がん、大腸がん、メラノーマなど、さまざまなタイプのがんの進行を抑制するCBDの効果が実証されています。たとえば、メラノーマのモデルマウスにおいて、CBDの投与はプラセボと比較して腫瘍の大きさを有意に縮小させ、生存期間を延長させたという報告もあります。

神経膠腫細胞の研究では、CBD単独または他の薬剤と併用することで、細胞死を誘導し、細胞の遊走と浸潤を抑制し、腫瘍のサイズを縮小、血管新生を抑制、腫瘍の退縮と生存期間の延長を誘導できることが示されています。

CBDの他の作用としては、GPR55の阻害が挙げられます。このGPR55は進行性のトリプルネガティブ乳がんなどのいくつかのがんで上昇することが知られており、GPR55の上昇は転移を起こす可能性が高いことと関連しています。これを阻害することで、抗がん作用を発揮します。

さらにCBDは、膵臓がん細胞へ選択的にアポトーシスを誘導する能力があるため、顕著な抗腫瘍効果を発揮するとの報告もあります、

当クリニックでの経験

筆者のクリニックで、CBDオイル、CBDカプセルを使用し始めて5年以上になりますが、まず副作用がないところが安心な点です。自然なものなので、一般に処方されている眠剤や安定剤、鎮痛剤とは全く異なるもので、依存性もありません。使用量は、個人差があって、少量から始めて徐々に投与量をふやしていって効果が出てくるときもあります。

症例の一部を紹介します。

(50歳代男性:うつ、不眠)
不眠とうつ、不安症で長年メンタルクリニックで数種類の処方薬を飲んでいたましたが、改善なし。当クリニックでCBDカプセル1カプセル50mgを朝夕内服。1カ月後に動悸もなくなり、眠れるようになり体調もよくなったので、従来の薬剤を減量。

(50歳代女性:うつ、ひきこもり)
もともとひきこもりで外にでなかった方でしたが、CBDカプセル10㎎を1日2回内服していたら、外出できるようになり笑顔もでてきた。

(60歳代男性 膵臓がんのがん疼痛に効果)
膵頭部がんで大学病院にて抗がん剤を使用。背部痛があり、病院の処方の副作用で眠気と便秘あり。内服できず、疼痛コントロールができなかったが、CBDカプセル50㎎を1日3回内服し、1カ月後から痛みが軽減して日常生活に近づく。

CBDを使用した、すべてに方に効果があったということはないですが、全体的にみて70~80%は、何らかの有効性があったと思います。

CBDDオイル、カプセルの使い方について

使用前に知っておいていただきたいことを列挙します。
(1) 個人差が大きいこと
自然物であるCBDは化学薬品と比べて反応の個人差がとても大きく、同じ効果を得るための用量が20~30倍違うこともあります。また、同じ人でも体調により必要量が異なってくることがあります。
(2)目的を明確にして摂取すること
健康増進や症状の改善など、目的により必要量は大きく異なります。多ければよいというものではありません。痛み、不安、発作、不眠など摂取目的を明確に定め、少量から徐々に増量していき、目的に合った適量を探したほうがよいです。また同じ個人でも体調や時期により必要量の変動もあります。
(3) CBDの二相性作用
少量ではマイルドな覚醒作用、用量が多くなるにつれリラックス効果が大きくなります。
眠剤として試すこともありますが、逆に夜に用いて覚醒効果が睡眠の障害になることもあります。日中に「少しずつから試す」のがよいです。

成人の服用方法と使用量

同じ量を数日間続け、効果を確認しながら、少しずつ増量していくほうがいいように思います。たとえば不眠の場合、まず日中に用いてリラックス効果が得られる用量を把握しておき、その量を夜間に服用する方法もあります。

CBDオイル、CBDカプセル10(1カプセル10㎎)、CBDカプセル50(1カプセル50㎎)などの製品がありますが、初回の量は目的、疾患によってもちがうので、主治医と相談してください。
がん疾患、うつ、線維筋痛症ですと、50㎎を1日1回、もしくは1日2回から開始しています。

女性や未成年の方は10㎎から開始しています。上限は設けていません。これは副作用やリバウンドがないからです。開始当初に眠気が出る方もいますが軽度です。

臨床CBDオイル研究会とは

日本におけるカンナビノイド医療の臨床利用と普及をミッションとし、2018年6月に発足した研究会です。医師・歯科医師380人超、獣医師20人超の国内最大のカンナビノイドの医療専門家グループです。ドクターの中には、疲労回復、健康維持のため、日々内服されている方もいます。

カンナビノイド(主としてCBDオイル)の臨床知見を情報交換するための研究会であり、多数の病態に非常に多くの効能をもつカンナビノイドの正しい知識の啓蒙と適正な使用の普及を推進し、日本における医療及び人々の健康全般に貢献することを目的としています。

研究会へ記載されている症例を列挙しました(図2.3)。詳しくはホームページをご覧ください。

おわりに

大麻草成分の研究から発⾒されたエンド・カンナビノイド・システム(ECS)は、⽣物進化の過程で、多数の細胞の制御のため脳神経系の発達とセットで形成されてきたと考えられる制御システムです。
内因性カンナビノイドは⽼化、栄養障害、ストレス、有害物質、先天的な障害などで低下します。それは各種神経の制御が失われることを意味し、この「内因性カンナビノイド⽋乏による調節障害」が多くの疾患や不調に関係していると考えられています。

そのような「内因性カンナビノイド⽋乏症」による不調に対し、CBDオイルがECSの強化を介して、さまざまな病態を改善させるのです。

 

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