認知症検査(血液検査)

認知症に関する検査について

認知症は前段階を発見して適切な治療を行うことで、症状が現れるのを遅らせることができるようになってきています。そこで当院では、MCIスクリーニング検査、そしてアルツハイマー病や高齢者の認知機能低下リスクを調べるAPOE遺伝子検査を行って早期発見やリスク管理のサポートを行っています。

MCIスクリーニング検査(血液検査)

MCIは、“軽度認知障害”のことで、認知症の前段階の状態だとお考えいただくとわかりやすいと思います。この段階では日常生活を問題なく送ることができますが、数年後に約半分の方が認知症になるかもしれないという状態だとされています。

最近の研究では、このMCI(軽度認知障害)の段階を早期に発見し、適切な治療を受けることで認知症の発症を防ぐことや、発症を遅らせることができることがわかってきています。
MCI(軽度認知障害)の段階でMCIスクリーニング検査を受けて、適切な対策をスタートさせる必要がありますが、この段階では自覚症状がないため、効果的な予防や発症を遅らせる治療がなかなかできないのが現状です。
当院では、自覚が全くない段階で意識的にMCIスクリーニング検査を受けることをおすすめしており、できるだけ多くの方に早期治療を受けていただきたいと考えています。

MCIスクリーニング検査の内容

認知症の中でも患者数が最も多いアルツハイマー病では、脳内にアミロイドβペプチドが蓄積することで神経細胞に障害を起こして発症します。
そのため、MCIスクリーニング検査では、認知症の原因となるアミロイドβペプチドに関わる特定のたんぱく質の血中濃度により、MCI(軽度認知障害)の可能性を調べます。

MCIスクリーニング検査では、10cc程度の採血だけでMCI(軽度認知障害)の有無を調べることができます。

APOE遺伝子検査

アルツハイマー病や高齢者の認知機能低下に関与するとされている重要な遺伝子はいくつかありますが、その中にAPOE遺伝子があります。
APOE遺伝子は、アポリポたんぱくE(ApoE)を作り出す役割を持っており、「アミロイドβペプチド」と結合し、蓄積や大きな塊を作る物質のひとつだとされています。
アルツハイマー病は、脳内にアミロイドβペプチドが蓄積することで神経細胞に障害を起こして発症しますが、この時、作用の強さはAPOE遺伝子型によって異なるとされています。
このAPOE遺伝子検査では、APOE遺伝子の型を調べることで認知症の発症リスクを推定します。

APOE遺伝子型には、“APOE2(ε2)”“APOE3(ε3)”“APOE4(ε4)”があります。このうち、APOE遺伝子型ε2やε3だけを持つのと比べ、APOE遺伝子型ε4を多く持つほどアルツハイマー病などのリスクが高まるとされています。ただし、APOE遺伝子型にε4を持っているから必ずアルツハイマー病を発症するわけではありません。生活習慣の改善などを行うことで、発症率を低減させることも可能です。そのためにも、きちんとリスクを知っておくことは役立ちます。

APOE4遺伝子型とアルツハイマー病のリスク

アルツハイマー病発症APOE4(ε4)の遺伝子型を持っている場合、持っていない人に比べてアルツハイマー病になるリスクが高いとされています。
アルツハイマー病の人の中でε4を持つ人と持たない人の割合、健常な人の中でε4を持つ人と持たない人の割合を出し、検査ではその比較からリスクを導き出します。

ε3/ε3の遺伝子型を持つ場合にアルツハイマー病を発症するリスクを1.0として、ε4を1つ持っていると3.2倍、ε4を2つ持っていると11.6倍の発症リスクとなります。
ただし、ε3/ε3の遺伝子型を持っていても、生活習慣などによってアルツハイマー病を発症する可能性はあります。APOE4遺伝子型検査はあくまでもリスクを知るためのものであり、将来のアツルハイマー病発症を正確に「予測」することはできません。