【正しいキズの治し方】第5回:ガーゼについて

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傷の処置では、いまでもよくガーゼを使っています。

傷を覆うことをドレッシングと言います。
このドレッシングの目的は、傷からの滲出液の吸収と管理、傷の治癒、保護、汚染防止、圧迫、鎮痛、被覆(傷を隠して自分と他人に傷の存在による不快感を与えないようにする)、薬剤の投与などがあります。

このドレッシングの手段としてよく使用されているものが、昔からのガーゼです。
比較的安く使いやすいガーゼは、ヒポクラテス(古代ギリシアの医学の大成者で医学の父,紀元前460年ごろ)やガレノス(古代ローマ時代最大の医学者,130年~200年頃)が唱えた「傷は乾燥させて治すべきである」という考え方にも適応するものでした。

ガーゼに吸収された滲出液は,ガーゼの通気性により蒸発し傷は乾燥するのです。
ガーゼを使用すると、滲出液の吸収(しかし傷は乾燥)、傷の保護、被覆、薬剤の投与、圧迫などができます。
しかし、傷の乾燥は自己治癒力が発揮されるのを阻害します。
現在は常識でも、日本でもつい30年ぐらい前までは、
乾燥させるのがよいとされていました。

確かに、外力からの保護はある程度可能です。
しかし、汚染防止は困難です。
軟膏などをつけて薬剤の投与はできますが、
ガーゼの枚数によっては傷を必要以上に圧迫してしまう恐れがあります。
自分も昔は、大学病院でこんなことを毎日していました。

ガーゼの他の問題点としては、ガーゼの交換のときにかさぶた(痂皮といいます)とともに新しくできている肉芽組織や上皮細胞がガーゼに付着し剥がれてしまうことです。
また、ガーゼの付着は交換のとき疼痛を生じること、
ガーゼを固定するテープにより皮膚炎を起こすことなどです。

日本の医学史でも、長く使われてきたガーゼですが、
正しく丁寧に傷を治す基本から考えると適切なものではなくなったのです。
ガーゼを使ってもいいときは、感染していて傷から膿が出ているときや多量の滲出液を認めるとき(吸収)、応急処置(血液の吸収、圧迫止血、薬剤の投与、傷の保護,被覆)のみになってきました。